インプラント治療を受ける上で心配なのは、やっぱり手術ですよね。今回の特集では、インプラントを埋める手術当日がどのような流れで行われるか、順を追って詳細にご説明したいと思います。
9:00 来院
当日の体調の確認
手術当日の患者様の体調を確認します。例えば、当日風邪を引いて38℃の発熱があったり持病が想定外に悪化している場合など、体調が悪い場合にはこの時点で手術を延期する判断をする場合があります。
お薬の内服
手術の前に、いくつかのお薬を飲んで頂く場合があります。お薬の内容は患者様や手術内容に応じて、その都度調整を行います。主に下記のようなお薬を使う場合があります。
予防的抗菌薬 | 手術の傷口から侵入する細菌と戦うためのお薬です。 |
消炎鎮痛薬 | 主に痛みの発生を抑制し、他の炎症症状も抑制するお薬です。 |
ステロイド薬 | 術後の炎症を積極的に抑制するお薬です。 |
精神鎮静薬 | 主に緊張感を抑制し、心をリラックスさせるお薬です。 |
9:05 診察チェアへ
口腔内清掃・消毒・装置の除去
お口の中の清掃・消毒を行います。また、取り外しの出来る入れ歯や、治療中の仮歯を一時的に撤去する作業を行います。
サージカルガイドの試適・調整
インプラント手術を正確に行うために製作したサージカルガイドが、患者様の歯列にフィットするようチェックし、調整致します。
局所鎮痛麻酔
手術の対象部位に、痛みを感じないようにするための麻酔を注射にて行います。使用される麻酔薬は通常の歯科治療で用いられる麻酔と同様のものですので、インプラント手術の麻酔だから特別に痛いと言う事はありません。局所麻酔の注射を急いで行うと、その注射処置自体が痛いので、ゆっくり行います。一度に手術を行う範囲の広い方は、手術そのものよりも、この時点での麻酔時間の方が長いこともあります。局所麻酔が終われば、これ以降は麻酔が効いているので、痛みは一切ありません。手術当日の痛みのピークは、この時点で超えたことになります。
9:15 手術患者様専用個室へ
更衣・手術の準備
麻酔の影響で唇の感覚が無いため、よだれが垂れたりしてしまいます。患者様の着衣が汚れないよう、専用の服へお着替え頂きます。手術患者様専用のプライベートルームを備えておりますので、そちらでお着替え頂き、他にも、髪留めやアクセサリー類などを外して頂いたり、お手洗いをお済ませ頂くなど、手術の準備を整えて頂きます
9:25 無菌手術室へ
生体モニターの装着・バイタルサインの確認
プライベートルームと隣接している無菌手術室に移動し、手術台に乗って頂きます。心電図や呼吸の状態をリアルタイムで把握するために、生体モニターを装着します。ほとんどの方は、手術中よりも手術直前の方が緊張していて、血圧や心拍数が高い傾向にあります。この後に手術が始まると、痛みが無い事を実感していただけるので、徐々に血圧や心拍も落ち着いていきます。このような体の変化をリアルタイムに観察するために、生体モニターは大変有効です。
静脈内鎮静
著しく簡単な症例を除き、一般的に当院では、点滴を体に接続します。静脈内から鎮静薬を追加する事を始めとし、下記のようなメリットがあります。
- 静脈内鎮静:鎮静薬を始めとし、抗菌薬、痛み止め、腫れ止めの薬などを状況に応じてリアルタイムで追加投与できます。
- 緊急時対応:万が一容態が急変した場合にも、既に点滴が接続されていれば、救急薬の投与が非常にスムーズに行えます。
消毒・清潔環境の設置
患者様の傷口に細菌が極力侵入しないように、手術環境は「清潔」と「不潔」の2者に明確に分けられます。周囲のテーブルは、滅菌済みのシートに覆われ、その上に滅菌済みの器具が並べられます。手術に参加するスタッフも、滅菌済みのガウンや手袋、帽子を装着します。そして、患者さんも、お口の周り以外は滅菌済みの布で覆い隠します。わずかに露出したお口周辺も、消毒薬で消毒します。このようにして、スタッフの手が振れる可能性のある環境を、全て清潔な環境で整えます。
9:35 手術
来院から既に30分以上経過し、ようやく手術が始まります。手術の手順は手術内容により異なるのであくまで参考程度にお考え下さい。
切開剥離
粘膜をメスで切り、内部の骨を露出させる作業です。
ドリリング
インプラントを埋めるための穴を、骨に開けていきます。麻酔が効いているので、痛みはありません。感じるのはドリルの振動です。ここまでくると、患者様も「本当に痛くないんだ」と実感いただけますので、緊張感も一気に和らいでいきます。
インプラント体の埋入
インプラント体を埋め込んでいきます。事前の計画通り埋まっているか確認をしながら行います。
骨形成
歯の抜けた部位は、必ずしも理想的な形態に治癒しているとは限らず、不要な凸凹が残存していたりします。これをキレイに整地するような作業も行う場合があります。
縫合止血
傷口を糸で縫って閉じ、止血を確認し、手術は終了となります。当院ではデジタルシミュレーションやサージカルガイド製作などの事前準備を徹底し、少しでも手術時間を短縮して患者様のお体の負担を低減できるよう、日々努力しております。執刀開始からこの時点までで、単純な手術であれば10分以内で終わることもあります。
10:00 プライベートルームへ
手術を終えて、手術室横のプライベートルームへお戻り頂きます。
休憩
手術でお疲れであったり、鎮静薬の効果が残留している場合のために、仮眠をお取り頂ける様準備しております。もちろん、体調に問題さえ無ければ、仮眠せず早めにお帰り頂く事も出来ます。
更衣
手術着をお着替え頂き、お帰りの準備を整えて頂きます。
CT・レントゲン撮影
CT・レントゲン撮影を行い、手術が上手くいっているかの確認を行います。
仮歯の再装着
入れ歯や仮歯を外して手術を受けられた方は、この時点で再度装着致します。
お薬の処方
抗菌薬や痛み止め、腫れ止めなどのお薬を処方致します。
術後管理の説明
今後の傷口の管理方法や生活について、ご指導致します。翌日など、直近に傷口の様子を拝見したいので、アポイントをご取得頂きます。
10:30 退院
お疲れ様でした、これで全行程は終了です。お帰りの際には十分お気をつけください。
いかがでしたか?インプラント手術当日の流れを細かくご説明しました。当院のインプラント手術当日の流れは、日本口腔インプラント学会発行のガイドラインに準拠すよう設計しております。当院の患者様には、手術前の同意書の説明の際にも、上記のタイムスケジュールをお渡しており、患者ご本人様だけでなく、送り迎えをされるご家族の方にもご安心頂けるよう配慮しております。「インプラントの手術が怖くてどうしても踏み出せない」という方にとって、安心してインプラント治療を選択できる一助となれば幸いです。